多くの被爆者の救済を!厚生労働省と原爆症認定を巡る動き
2001年の中央省庁再編により生まれた『厚生労働省』。
こちらでは食品や医療、社会福祉や労働など、多岐に渡って国民をサポートしています。
最近では、『原爆症認定』について被爆者が訴えるニュースを目にする機会が多く、
人々の関心が集まっています。
ここでは、現行の制度と改正案についてまとめていきたいと思います。
2つの省の統合により誕生した厚生労働省は、社会福祉や
労働・医療などを管轄
厚生労働省は日本の行政機関の1つで、『厚労省』と略します。国民生活の保障や向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、
社会福祉や社会保障、公衆衛生の向上や労働条件などを整備することが任務です。
厚生労働省は2001年1月に行われた中央省庁再編により、
厚生省と労働省を廃止・統合することで誕生しました。
以前は厚生省が医療や保健、社会保障を管轄し、
労働省はその名の通り労働政策に関する行政を取り扱っていました。
厚生労働省の内部組織は、厚生労働省設置法や厚生労働省組織令、
厚生労働省組織規則により重層的に規定されています。
幹部ポストは5つあり、トップである厚生労働大臣を筆頭に、厚生労働副大臣(2人)、
厚生労働大臣政務官(2人)、厚生労働事務次官、厚生労働審議官という役職があります。
厚生労働省の任務は多岐に渡っており、分野別に挙げると以下のようになります。
【厚生労働省が扱う分野】
■健康・医療分野…健康・食品・医療・医療保険・医薬品や医療機器
■子ども・子育て分野…子どもや子育て支援・職場における子育て支援
■福祉・介護…障害者福祉、生活保護や福祉一般・介護や高齢者福祉
■雇用・労働…雇用・職業能力開発・労働基準・雇用均等・
非正規雇用(有期・パート・派遣労働)・労使関係・労働政策全般
■年金…年金や日本年金機構関係
■その他…国際関係・研究事業・社会保障全般・労働政策全般・
戦没者遺族などへの援護
これらのすべてを解説するのは大変なので、
今回は最近ニュースで取り上げられている『原爆症』についてご紹介していきます。
ニュースで取り上げられている『原爆症認定』とはどんなもの?
太平洋戦争中に広島と長崎に原子爆弾が投下され、日本は世界で唯一の被爆国となりました。
『原爆症』とは、原爆による被災によって生じた健康障害の総称であり、
被爆直後に発症するケースが多いものの、
10年や20年後に発症することも少なくありません。
厚生労働省は被爆者を支援するために原爆症認定の制度を設けています。
被爆者は原子爆弾による放射線が原因となって起こった病気や怪我などについて医療を受ける場合、全額国の負担で医療費の給付を受けることができます。
そのためには、その病気や怪我が、原子爆弾の傷害作用によるものであり、
現に治療を要する状態であるという厚生労働大臣の認定を受けなければなりません。
また、『原爆症認定』と『被爆者であることの認定(被爆者健康手帳の交付)』は
別物であることに注意が必要です。
被爆者健康手帳は被爆時に一定の地域にいた者、原爆投下後2週間以内に入市した者、
被爆者の救護などを行った者及びそれらの者の胎児に対して交付されます。
この交付を受けることで、被爆者であることが証明され、
医療費が無料となったり健康診断を受診できたりします。
原爆症の認定を受けると医療費が10割国庫負担になりますが、
被爆者の場合は7~9割を保険給付で、
残りの1~3割を国庫負担でという形になっているため、
認定の前後において自己負担がないことには変わりがありません。
2013年3月末時点では、被爆者健康手帳保持者が
約20.2 万人存在すると言われています。
その中で造血機能障害や肝臓機能障害など一定の病気にかかった場合、
『健康管理手当』を月額33,330円受けることができます。
この給付を受けているのは約17.1万人です。
さらに、その中で原爆症の認定を受けると『医療特別手当』が
月額135,540円給付される仕組みになっています。
これを受給しているのは8,552人に上ります。
この手当は『現に医療を要する状態』が続く期間に受給でき、
その病気が治った後には『特別手当(50,400円)』を受給することができます。
今まで認定されにくかった病気に関して、
2013年内に結論を得ることを検討
さて、今までは現行の原爆症認定制度についての概要をお伝えしてきました。ここからは、この認定をめぐる動きについてお伝えしていきたいと思います。
厚生労働省は原爆症の認定制度を巡り、被爆者団体から『認定されないことが多い』と指摘されている心筋梗塞などの病気について、爆心地からの距離を基に、新たに認定の目安を示す方針をまとめました。
これまでに認定された事例も参考にしながら、
厚生労働省の現段階での案は以下の通りです。
【病気の種類と爆心地からの距離の目安】
■心筋梗塞…1.5キロ以内
■甲状腺低下症…1.8~2.0キロ以内
■慢性肝炎・肝硬変…1.3キロ以内
■白内障…1.3~1.5キロ以内
ただし、与党内からは『被爆者の高齢化なども考慮し、
柔軟に対応すべき』との意見が出ています。
厚生労働省は今後、与党側と調整を進め、年内に結論を得たいと考えています。