ドラマ騒動で話題!「赤ちゃんポスト」熊本県慈恵病院

2014年の1月から、日本テレビ系で児童養護施設を舞台としたドラマが始まりました。

放送開始してすぐに、各方面からさまざまな反響があり、特に日本で唯一赤ちゃんポストを設置している熊本県の慈恵病院や、児童養護施設の関係者などからは批判が上がりました。

それを受け、ドラマ中にCMスポンサーのCM放映が取りやめになるなど異例の事態になっています。

ここでは、日本における赤ちゃんポスト『こうのとりのゆりかご』についてご紹介していきます。


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さまざまな事情により育てられない新生児を預かる施設

『赤ちゃんポスト』とは、諸事情のために育てることのできない新生児を親が匿名で養子に出すための施設、およびそのシステムの日本における通称です。

国内においては、熊本県熊本市にある慈恵病院が唯一このシステムを採用していて、『こうのとりのゆりかご』という名称を使用しています。

このシステムは日本以外の国でも見られ、数世紀もの間、赤ちゃんポストの原型というべき施設がさまざまな形で存在していました。

ヨーロッパにおいては1198年にローマ教皇インノケンティウス3世の指示の下で作られたものや、1709年にドイツのハンブルクで設置されたものなどが先駆けとされています。

1880年代後半からは次第に姿を消していきましたが、最近では再び注目されるようになりました。

1996年に現代で最初となる赤ちゃんポストが設置され、次第に多くの国に広がっていきました。ドイツでは2000年にNPO法人が設置し、公私立病院など約80箇所に設置されています。

さて、話を日本に戻します。慈恵病院が『こうのとりのゆりかご』の設置申請をしたのは2006年のことでした。人目につきにくい病院東側に扉を作り、内部には適温に設定された保育器が設置されています。

新生児が入れられるとアラームが鳴り、医療従事者が駆けつけます。監視カメラが設置されているものの、親の匿名性を守るため映るのは赤ちゃんのみです。ポストに入れて良いのは生まれてから2週間以内の子供に限られています。

また、ポストを閉めると、新生児の連れ去りを防ぐ自動ロックにより、入れる側からは開けられなくなります。そして、健康状態を確認した後に、熊本市児童相談所が子供を県内の乳児院に移します。

そして、子供の生活費や里親への手当ては国と熊本県または熊本市が折半します。


赤ちゃんポスト設置には賛成意見と反対意見の双方がある

このように、新生児を守るために設置された『こうのとりのゆりかご』ですが、設置当初から賛成意見と反対意見が多く寄せられていました。主な意見について、それぞれまとめます。

【賛成】
・新生児の殺害・虐待を防げる
・中絶では命を絶ってしまうが、このシステムなら子供は生きられる

【反対】
・育児放棄や捨て子を助長する
・匿名性が倫理観の欠如を生み出している
・児童養育施設に問題を丸投げしている

このように、賛成意見と反対意見ともに一理ある内容なので、『こうのとりのゆりかご』についてはいつも議論がされています。このシステムを利用するルールはあるものの、それを守らない親も多くいて、就学前の幼児などが預けられるケースもあります。

『こうのとりのゆりかご』にはまだ課題がたくさんあり、主に若年層に対して『望まない妊娠』を避けるためにはどうすれば良いかを、しっかりと教育していかなければならないと思います。


日本テレビのドラマに、慈恵病院などから批判の声

2014年1月15日から、子役の芦田愛菜主演のドラマ『明日、ママがいない』が日本テレビで放送されています。児童擁護施設を舞台に、さまざまな事情で親と離れた子供たちの目線から、『愛すること』や『愛されること』をテーマにしたサスペンスドラマです。


babypost


1回目の放送から、主演の芦田愛菜の演技力に高い評価がされる一方で、『児童擁護施設に対して誤解を招く』といった批判も上がりました。特に、芦田愛菜が演じる施設のリーダー格のあだ名は『ポスト』であり、赤ちゃんポストに預けられたことからこのあだ名がついたと作中では語られています。


このドラマを受けて、『こうのとりのゆりかご』を運営する慈恵病院が『フィクションだとしても許される演出の範囲を超えている』として、番組の放送中止や内容の再検討などを求めました。

また、養護施設の描き方についても、『現実とかけ離れたシーンが多すぎ、誤解や偏見、差別を与える』として、子供たちや職員への謝罪を求めました。

この求めに対して日本テレビ側は第2回以降も予定通り放送を続ける方針を表明しました。そして、1月21日には全国児童養護施設協議会と全国里親会が会見を開き、内容や表現を改めるよう求めました。

そして、1月29日には全国児童養護施設協議会が『このドラマの影響で子供たちが実際に辛い思いをした事例が15例ある』との報告を発表しました。このようなトラブルから、CMスポンサーのクレジット表示やCM放映を取りやめるという異例の事態が起こりました。

作中には行き過ぎた表現もあるかもしれませんが、多くの方が赤ちゃんポストや児童擁護施設について考えるキッカケになったのではないかと思います。



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