「蛇の目傘」や「番傘」などの種類がある和傘とは?
最近、街を歩いていると
素敵な傘をさしている人に出会ったことはありませんか?
よくある傘よりも骨の部分が多く、和の色合い・・。
それは和傘か、もしくは
そのエッセンスを取り入れたものかもしれません。
和傘には、蛇の目傘、番傘、日傘などがあります。
開いたとき蛇の目に見える模様だから蛇の目傘。
商家などで番号を付けて客に貸したところから番傘。
番傘は太い竹の骨に厚い油紙を貼った普段使いの丈夫な傘
ですので男性用として使われるようです。
和紙に油を引いてないのが日傘、などです。
♪ あっめあっめふーれふーれ母さんが~
蛇の目でお迎えうっれしいなぁ~・・・ ♪
と、昔は歌にもありましたね。
その和傘も、今は手に入れるのも難しくなりました。
和傘は竹、紙、そして油との融合品であり職人技術のたまものです。
どんなつくりなのかその工程を調べてみました。
和傘の歴史
傘は奈良時代に中国から伝わりました。当初は、柄の部分はありませんでした。
身分の高い人の頭上につるす天蓋のようなもので
日よけや魔除け、またその身分の高さの象徴として使われていました。
庶民は、菅笠や蓑で雨風をしのいでいましたが
江戸時代になってようやく、傘が普及したそうです。
傘を使う人が増えたことで
その修理でそこそこの収入が得られるようになり
下級武士が藩の財政を助けるために
修理の内職を行っていたとも言われています。
日本の西洋化にともない、着物が衰退していくように
和傘も使われなくなっていきました。
現在は、国内でも十数件ほどしか
和傘を製作するところはないようです。
竹と紙から作る芸術品
昔から日本では、竹と和紙を使って様々な道具(工芸品とも民具とも言われています。)を作ってきました。
例えば、扇子、団扇、提灯、そして和傘です。
これらは中国から入ってきたものですが
日本の生活様式と美意識によりなじむための改良が繰り返され
今の形となりました。
傘は、唐傘(からかさ)と漢字を当てますが
「唐」という意味の他に
「からくり」という意味も多分にあったようです。
一つの傘には竹骨を40~80本使い、竹の数だけ工程があり
専門の職人がいると言われています。
傘をひらいた時の美しさ、
閉じた時に自然に紙が内側に入る作り(現在の傘は外側に閉じます)
たたんだ時には一本の竹にみえるようにする姿勢・・。
高い意識でひとつひとつ作ってきた先人のすがたを
和傘からみることが出来るのです。
そして油
竹にはった和紙に、油を染み込ませたら水をはじくので雨よけになります。
日傘には油は塗りません。
和傘に使用する油は
荏油(エゴマユ)、亜麻仁油(アマニユ)、桐油(きりアブラ、トウユ)
などが使われます。
この荏油は高価なものなので
亜麻仁油でほとんどが代用されます。
塗るというよりは、なでるように引き
厚く塗り過ぎないように細心の注意をはらいます。
これは終盤のとても大切な工程です。
岐阜県は、油の商人だった斉藤道山が美濃城主になったところです。
飛騨地方では荏胡麻が栽培され
そこから絞られた荏油で雨具がつくられていました。
岐阜県は長い間、和傘づくりが地場産業となっていました。
和傘職人
それでは和傘職人というのはどのようなことをしているのでしょうか。
○・骨師 骨師は、傘の姿が自然にはえている竹の様子になるべく 和紙と糸が骨の間に入ることを計算しつつ、削っていきます。 ○・張り師 張り師は、単に和紙を傘に張るだけではなく 先端に行くにしたがって細くなる骨と骨の間に 和紙をうまくたたみこめるようにします。 傘は、何百回と雨にぬれ、そのたびに 閉じたり開いたりを繰り返します。 紙が破れないように、骨から浮き上がらないようにするには 相当の熟練の技が必要となります。 ○・仕上げ師 仕上げ師は、張った傘に油を塗り 天日で乾燥させることをします。 油が多いと紙と紙がくっついてしまいますし 少ないと、水をとおしてしまい、雨除けになりません。 油を塗った傘が乾いたところで 骨の上にうるしを塗ります。 |
この他にも、出来上がった傘の内側に飾りの糸をかける仕事など
非常に手間のかかる工程と職人の技術によって、傘は作られます。
職人が育たない
こうして多様な工程でつくられる芸術品は「一本の傘を一人でつくることは不可能である」という問題を抱え
それが後継者不足に拍車をかけました。
しかし一方で、この芸術品の魅力にとりつかれた人がこの数年で何人かいて
その世界に飛び込み、修行をし
インターネットを活用して、需要を掘り起こすようになっています。
(参考)京和傘・日吉屋五代目 西堀耕太郎さん
http://souda-kyoto.jp/knowledge/kyoto_person/vol24_01.html
現代に生きる和傘
和傘の美しさは、茶道、舞踊、歌舞伎も取り入れられており折に触れてみることができます。
確かに野点(のだて、屋外で行う茶道)には傘がありますね。
そのほかにも、開いたときに末広がりになることから結婚式での縁起物、
和食店や旅館でのディスプレイ、そしてまさに傘寿の贈り物・・。
今でもその芸術品は、私たちの住む世界をいろどっています。
そして、大量消費の時代を見つめなおす気風が高まっている今
本当に大切な一本を持ちたいという人たちが
これまた少しずつですが
街をいろどり始め、新しい風景を作り始めています。
伝統から新しい時代が始まる
和傘はそのキーとなる存在なのですね。