性同一性障害(性別違和)とは?その診断やFtMやMtFについて

「性同一性障害」
(せいどういつせいしょうがい、Gender Identity Disorder, GID)
という言葉を聞いたことがありますか?

最近ではテレビドラマや小説に取り上げられたり
自分がこの障害を抱えていることをカミングアウトする芸能人も
いたりしてかなり身近な言葉になってきていると思います。

また、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)ともいいます。

日本精神神経学会は、心の性と身体の性の違和感が強い状態に
「性同一性障害」という診断名をつけていました。
2014年に「性別違和」と改めています。

その診断方法は?治療は?
身体と心が異なる性であるというのはどういうことなのか?

FtMやMtFという言葉についても調べました。

また、「ニューハーフ」や「同性愛」といった概念との違いを比較しつつ
治療法や2013年12月に行われた最高裁の判断などについて
ご紹介していきたいと思います。

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生物学的な性別と、自己意識が一致しないのが「性同一性障害」

「性同一性障害」とは、生物学的性別と性の自己意識とが
一致しないことが原因でおこる障害
です。

自分の生物学的性別に持続的な違和感を持ち、自己意識に一致する性を求め
時には生物学的性別を己の性の自己意識に近づけるために
性の適合を望むことさえある状態を指します。

そして、その病状を持つ者は「性同一性障碍者」「GID当事者」と呼ばれます。

生物学的性別が女性で、性の自己意識が男性である事例を「FtM」
(エフティーエム、Female-to-Male)
生物学的性別が男性で、性の自己意識が女性である事例を「MtF」
(エムティーエフ、Male-to-Female)
とも言います。

身体的な性別と性自認が一致しない人に対する幅広い表現として
「トランスジェンダー」という言葉があります。

TVドラマ「3年B組金八先生(第6シリーズ)」や東野圭吾の小説「片思い」
などでも取り上げられ、最近では認知度が高まってきています。


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この概念は、性に関するほかの概念と混同されることが多いため
ここで少し説明していきたいと思います。

まず、「同性愛(ホモセクシュアル、ゲイ、レズビアン)」
との違いについてです。

両者は根本的に異なっていて

同性愛は「恋愛の対象がどちらの性別であるか」
という性的指向に関する概念であり

性同一性障害は「自己の性の意識はどちらの性別であるか」
という性同一性に関する概念です。

また、男装や女装などの「異性装」とも異なります。
性同一性障害の当事者は、大多数の人々と同じく
あくまで性の自己意識に基づく服装をしているだけなので
異性装とは異なっています。

異性装は服装の好みやサブカルチャーにおける服飾などの理由で行われますが
いずれも性の自己意識に基づく装いを由来とはしていないので
両者は異なった概念として扱われます。

また、身体的には男性であることを明示した上で
女性性を体現し接客業や芸能業に従事する者を「ニューハーフ」と呼びますが
これも性同一性障害とは同義ではありません。

ただし、ニューハーフと呼ばれる者の中に
性同一性障害を抱える者も存在しています。


性同一性障害という身体的な壁、社会的な壁を乗り越え
ついに結婚。感動します!




「精神」と「身体」という、2つの治療法

続いては、性同一性障害の治療についてお伝えします。

日本精神神経学会の「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」では
社会への適応のサポートを中心とする「精神科領域の治療」

身体的特徴をジェンダー・アイデンティティと適合する性別へ近づけるための
「身体的治療」の2つで構成されます。

性同一性障害に対する診断と治療への理解と関心、
充分な知識と経験を持った医師らによる医療チームが診断と治療を行います

この動画では「診察・検査の内容」性同一性障害 GID FTM について
清水展人-hiroto-さんが説明してくれます。




また、性同一性障害に対して「心を身体の性に一致させる」という治療は
経験的、現実的、倫理的な観点から行われていません。

まず、精神科領域の治療では、当事者の生活の質を向上することを目的として
次のようなことを行います。

 □・非寛容によりもたらされがちな自己評価の低さを改善させる。

 □・ジェンダー・アイデンティティやそれに基づく自己同一性を再確認させ
  「自分は何者であるか」を明確にさせる。

 □・社会生活上に生じ得る様々な困難を想定し、その対処法を検討させる。

続いて、身体的治療についてです。
「ホルモン療法」「乳房切除」「性別適合手術」があります。

まず、ホルモン療法は身体的性別と反対の性ホルモンを投与することで
身体的特徴を本来の性に近づける治療です。

生物学的女性には「アンドロゲン製剤」を投与
これにより月経が停止したり声が低くなったりします。

また、生物学的男性には「エストロゲン製剤」を投与
これによって筋肉が減少したり肌のキメが細かくなったりします。

ただし、副作用を伴うため、この治療には数々の条件があります。
また、生物学的女性にアンドロゲン製剤を投与しても乳房の縮小は
ほとんど起こらないため、乳房切除術が必要になる場合があります。

そして、外科的手法によって本来の性に合わせて形態を変更する手術療法
のうち内性器と外性器に関する手術を性別適合手術と呼びます。

性物的女性に対しては、子宮卵巣摘出術や陰茎形成術が行われ
生物的男性に対しては精巣摘出術や造膣術などが行われます。

しかし、これにより生殖能力は永久的に失われ、元に戻すことは不可能であり
男性または女性としての新たな生殖能力を得ることもできません。

また、骨粗しょう症などの可能性から、ホルモン療法は
生涯にわたって継続されます。


身体は男性、心は女性の”ユーイチロー”
「死を覚悟して 女子大生」という動画です。





2013年12月に最高裁は法律上の父子関係を初めて認めました

2013年12月、性同一性障害を抱える人々にとって
うれしいニュースが飛び込んできました。

女性から男性に性別を変更した場合、養子以外で子供を持ちたいとき
第三者から提供された精子を使って人工授精を行うという方法がとられます。

しかし、その場合は戸籍上で「嫡出子」としては扱われず
父と子の間に法律上は親子関係がないとされてきました。

しかし、2013年12月に最高裁は法律上の父子関係を初めて認めました
2004年には「性同一性障害特例法」が施行され
夫と妻の間には法的な夫婦関係があります。

そして、民法の規定では「妻が結婚中に身ごもった子は夫の子と推定する」
とされています。そのため、最高裁は人工授精でもうけた子供について
妻の子を夫の子と見るべきだと判断しました。

この決定は従来の血縁関係を重視する考えにとらわれず民法の解釈を広げ
多様化する家族の形を重視した自然な流れであると言えます。

しかし、今回は裁判官の間で賛否が3対2に割れたこともあり
現代の事情に即した法整備を急ぐ必要があると言えるでしょう。


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