芥川賞と直木賞、混同しがちな2つの文学賞の違いって?
日本の文学賞として特に有名なのは芥川賞と直木賞です。
しかし、あまり本を読まない方にとっては
この2つの賞の違いがわからないのではないでしょうか。
2つとも1935年に菊池寛によって創設された賞ですが、
明確な違いがあります。
2つがどういったジャンルの小説を対象にしている賞なのか、
わかり易く解説しましょう。
新人のための芥川賞
まず、芥川賞について説明します。簡単に言うと、芥川賞は純文学の新人のための賞です。
純文学とは、
娯楽性よりも芸術性を重視した小説のことです。
マスコミに注目されやすいのが直木賞よりも芥川賞なのは、
文芸界の将来を担う若手の誕生が注目されているからです。
受賞をきっかけに人気作家への仲間入りを果たす若者は多く、
2010年には映画化もされた西村賢太の「苦役列車」が、
2011年には田中慎弥の「共喰い」などが受賞しています。
また、2012年には当時75歳の黒田夏子の処女小説「abさんご」
という小説も受賞しています。
年齢は関係なく、
新人であるということが大事な賞なのですね。
中堅・ベテランのための直木賞
直木賞は芥川賞とは対照的に、中堅・ベテラン作家の大衆小説が対象になっている賞です。
しかし、創設当時は同じく新人向けの賞でした。
会を重ねるうちに新人が受賞しにくい賞になっていったことで、
選考基準に中堅作家という項が加えられました。
これは大衆小説というジャンルを取り巻く
様々な背景があってのことでした。
しかし、何度か20代の若者が受賞しており、
近年では2006年に「まほろ駅前多田便利軒」で三浦しをんが、
2012年に「何者」で朝井リョウが受賞しており、
人気作家への仲間入りを果たしています。
二人は既に作家としての実績があったため、
受賞に至ったのですね。
歴代の受賞者はそうそうたる面々で、
浅田次郎、山崎豊子、司馬遼太郎、五木寛之、野坂昭如などが受賞しています。
最も威厳ある文学賞と呼ぶにふさわしい賞でしょう。
最も有名な2つの文学賞にはこのような違いがあるのですね。
混同しがちですが、きちんと違いを理解しておけば、今後の受賞者発表がとても楽しみになるのではないでしょうか。
これまで小説を読まずに生きてきた方が、
よし、小説を読んでみよう!
とおもった時に読むべきなのは直木賞受賞作家の賞です。
読みやすく、誰からも面白い!と思われる小説のみが受賞されていますので、
今後の本選びの参考にしてくださいね。
第150回 平成25年/2013年下半期 (平成26年/2014年1月16日決定)
【候補】
朝井まかて(あさい) 「恋歌(れんか)」(講談社)
伊東 潤 (いとう じゅん) 「王になろうとした男」(文藝春秋)
千早 茜(ちはや あかね) 「あとかた」(新潮社)
姫野カオルコ(ひめの) 「昭和の犬」(幻冬舎)
万城目 学(まきめ まなぶ) 「とっぴんぱらりの風太郎(ぷうたろう)」(文藝春秋)
柚木麻子(ゆずき あさこ) 「伊藤くんA to E」(幻冬舎)
【選考委員】
浅田次郎、阿刀田高、伊集院静、北方謙三、桐野夏生、高村薫、
林真理子、東野圭吾、宮城谷昌光、宮部みゆき、渡辺淳一
※正式名称は「直木三十五賞」。選考は1月と7月の年2回行われる。主宰は文藝春秋。
一人の作家が二度以上受賞することはできない。また、芥川賞との重複受賞もできない。