おすきなふくは? 秋の七草
秋にも七草があることをご存知ですか?
その年の無病息災を願う春の七草に対し、秋の七草はその草花を鑑賞するためのものと言われています。「秋の野に 咲きたる花を 指折りて かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「芽子(はぎ)の花 尾花(おばな)葛(くず)花(ばな)なでしこの花(はな) 女郎花(おみなえし) また藤(ふじ)袴(ばかま) 朝顔(あさがお)の花」
山上憶良が二首連続で詠んだ歌で、万葉集につづられています。
ここでの朝顔は桔梗のことです。
(今の朝顔は平安時代に伝来したといわれています。)
秋の七草のあれこれ、見ていきましょう。
秋の七草の覚え方
おすきなふくは?と覚えましょう。頭のかたすみに入れておくと何かと楽しめます。お おみなえし
す すすき
き ききょう
な なでしこ
ふ ふじばかま
く くずのはな
は はぎ
薬草としての秋の七草
春には七草粥がありますが、秋にはありません。そのかわり薬草として、昔から私たちの生活に根ざしていました。
葛は、葛根湯でおなじみですね。風邪のひき始めに使われます。
桔梗や萩はその根を煎じて使われていました。去痰作用やのぼせに効果があるそうです。
各地で行われる秋の七草のイベント
鑑賞用としての秋の七草にちなみ、毎年9月ごろに全国各地で鑑賞会が行われています。有名なのが、秩父の長瀞地区での七草寺めぐりです。
(各寺にはそれぞれ秋の七草の花が咲き、訪れる人を楽しませています。)
京都の平安神宮では、神苑の無料公開が恒例行事です。
そのほかにも、秋の七草を愛でながら月見だんごを食べる会があったり、鈴虫の鑑賞会をして耳でも楽しんだりとさまざまな秋を楽しむイベントがあります。
いずれも、夏の終わりを感じ季節のうつりを楽しむという、古来から伝わる四季とのかかわりが今も感じられます。
秋の七草は絶滅危惧種?
この七草の中で、キキョウとフジバカマは絶滅危惧種として、環境省のレッドリストに指定されています。都道府県によっては、そのほかの草花も絶滅が危惧されています。開発と乱獲により、草花が自生する環境が少なくなっているのが現状です。
現代の秋の七草は?
昭和時代に入り、ある新聞社が文学者を集め、現代の秋の七草を選ばせて発表したことがあったようです。しかし、いずれも憶良の選んだものをしのぐことはできなかったとのこと。
それだけ憶良をはじめとする古代の人々が、草花や四季と深くつながりあいながら生活していたということですね。万葉集をひもとくと、そんな人々の声が聞こえてくる気がします。
いかがでしたか?
秋の七草は、とても身近な存在だったのですね。
すべては難しくても、秋の訪れとともにひとつずつ七草を見つけて楽しみたいと思いました。