再生医療に光!ES細胞、iPS細胞、STAP細胞の違いとは?
2012年に山中教授がiPS細胞の作製で
ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
iPS細胞はさまざまな細胞に分化できる『万能細胞』の1つであり
再生医療への応用が期待されました。
2014年1月末にはSTAP細胞と呼ばれる万能細胞が発表され
ユニットリーダーが若い女性であったことも手伝って
発表から大きな話題となりました。
ここでは3つの万能細胞の作製法や違いについて
まとめていきたいと思います。
万能細胞の研究によって再生医療への応用が期待されている
すべての生物は『細胞(さいぼう)』で出来ていて構造上・機能上の基本単位として扱われます。
細胞は英語で『cell(セル)』と呼びますが
『小さな部屋』という意味であり
1665年にロバート・フックが名づけました。
生物の中には1つの細胞のみで出来ている『単細胞生物』と
複数の細胞から出来ている『多細胞生物』があり
私たちヒトは後者に分類されます。
多細胞生物ではそれぞれの細胞がさまざまな機能を持ち
複雑に個体を構成しています。
さて、細胞の中でも特に最近注目されているのが
『万能細胞(ばんのうさいぼう)』と呼ばれるものです。
万能細胞は、多細胞生物の体を構成する
すべての種類の細胞になれる能力(分化能)を持っています。
万能細胞という言葉は主に一般向けの解説や
マスメディア向けに用いられている用語であり
専門的には『多能性細胞(たのうせいさいぼう)』と呼ばれます。
万能細胞としては
1981年イギリスにおいて
『ES細胞』が作られたのが最初です。
そして、山中教授らのグループが作製した『iPS細胞(人口多能性幹細胞)』や
最近話題になっている『STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞
しげきじゃっきせいたのうせいかくとくさいぼう)』が挙げられます。
これらの細胞は再生医療への応用が期待されることから
世界的に注目が集まっています。
ES細胞は倫理面の問題が議論されてきた
続いては、今挙げた3つの万能細胞について少しずつご紹介していきたいと思います。
1つめはES細胞。
こちらは受精卵が『胚盤胞(はいばんほう)』と呼ばれる段階まで成長したところで取り出し
『フィーダー細胞』と呼ばれる細胞と一緒に培養することで作製できます。
しかし、受精卵を壊す作成方法に対して倫理的問題があるとされ
また患者に細胞を移植する際に拒絶反応が起こるという問題も挙げられています。
日本では、体外受精による不妊治療の際、母体に戻されず
余ってしまった凍結保存胚の内、破棄されることが決定したものに関してのみ
ヒトES細胞の作製が認められています。
続いてはiPS細胞です。
京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らは
マウスの『胚性線維芽細胞』と呼ばれるものに
4つの因子を導入することで
ES細胞に似た万能細胞を作製できることを発表しました。
そして、この功績により山中教授は2012年に
ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
これはES細胞のような倫理的問題や
拒絶反応の問題を一挙に解決できるため、
ES細胞に代わるものとして大きな注目と期待を集めています。
ただし、作製した細胞ががん化する可能性や
胎盤には分化できないという欠点もあります。
両者の研究は密接に関連しているため
今後もES細胞の研究は必要であると考えられています。
STAP細胞の論文発表には、さまざまな疑惑が存在するのも事実
それでは2014年1月に論文発表が行われたばかりで今ちょうど話題に上っているSTAP細胞についてまとめていきたいと思います。
これは、動物細胞に
特定の外的刺激(ストレス)を与えることで作製します。
マウスの細胞を弱い酸性の溶液に入れて刺激を与えることにより
さまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力が生じます。
これまでの学説では、いったん皮膚などになってしまった場合は
このような刺激で万能細胞になることはありえないことだったのです。
ですから生命科学の常識を覆す発見とされました。
また、これを発表した
理化学研究所のユニットリーダー・小野方晴子博士が
若い女性研究者であったことも手伝って
大きな話題となりました。
STAP細胞は、iPS細胞では作ることが出来ない
胎盤を含むすべての細胞に分化できるとされています。
この発見には世界中の人々が注目しました。
しかしながら、発表後1ヶ月経っても
理化学研究所の実験室以外では作製に成功していないという状況や
論文において画像の重複や加工の跡が見られたことなどが指摘され
研究成果についての疑問が投げかけられるようになりました。
これを受け、3月5日にはSTAP細胞の作製法が英文9ページに渡って公開され
『生後1週間を過ぎたマウスでは上手くいかない』
『メスよりオスが良い』などの条件が書かれています。
万能細胞の研究は、
再生医療の進歩には欠かすことのできない存在です。
研究を長期的に続けていくために
未来の研究者である子供達の『理科離れ』への対策も
重要になってくると思います。