国の天然記念物で絶滅危惧種のミヤコタナゴって何?
2014年1月14日、警視庁は淡水魚『ミヤコタナゴ』を譲り受けるなどしたとして、男性会社役員ら3人を書類送検しました。
男性がミヤコタナゴを1000匹以上に繁殖させ、扱いに困ったために文化庁に連絡して発覚しました。
ミヤコタナゴは絶滅の恐れがあるとされる希少な魚であり、繁殖が難しいとされているため、このニュースは世間を大いに騒がせました。
ここでは、ミヤコタナゴなどの絶滅危惧種について、ご紹介していきたいと思います。
人間の影響で絶滅する危険がある種を指定
ミヤコタナゴという魚についてご紹介する前に、まずは『絶滅危惧種』とはどういうものなのかについてまとめていきたいと思います。もともと、生物のある種が絶滅すること自体は、地球の生命の歴史において無数に起きてきました。
しかし、人間の経済活動がかつてないほど増大した現代においては、人間の活動が生物環境に与える影響が無視できないほど大きくなっています。
そして、それによって種の絶滅が発生しています。このような絶滅を防ぐためには、生育環境の保全や、場合によっては保護活動など人間の直接介入が必要とされています。
そして、保全活動の前提として、どの種が絶滅の危機にあるのか、どの程度の危機なのか、また危機の原因は何かなどを知る必要があります。
これらの評価は地球規模で行われるものと、国や地域ごとに行われるものがあります。「どの種が絶滅の危機にあるのか」は国際自然保護連合(IUCN)により行われています。
また、「どの程度の危機なのか、また危機の原因は何か」は日本の場合、環境省が評価を実施しています。
そして、IUCNや環境省が定期的に『レッドリスト』や『レッドデータブック』と呼ばれる絶滅危惧種のリストを公表しています。
レッドリストは絶滅の恐れがある野生生物の名称やカテゴリーなどの最低限の情報のみが記載。
レッドデータブックはレッドリストの内容に加えて、形態や繁殖、分布や絶滅の要因、保全対策など、より詳細な情報が盛り込まれています。
ただし、クジラ類の哺乳類や海水魚、海に生息する軟体動物は水産庁が担当しているため、対象外となっています。
また、1990年代からは国のみならず各都道府県においても学識経験者や地元有識者の意見や生息調査に基づいて、このようなリストが作成されています。
どんな種がレッドリストやレッドデータブックに載っているの?
続いては、具体的にどのような種が絶滅危惧種に指定されているのかについてです。ここでは、IUCNが作成したものと環境省によるものについて、絶滅危惧種のごく一部をご紹介していきます。
【IUCN】
アカアシドゥクモンキー:ベトナムの中南部およびラオスの一部に生息する種であり、生息地の破壊や狩猟によって数が減っていきました。
マンドリネット(花):インド洋のモーリシャス島特有の種です。2地域に成熟した46の個体が生息するのみです。繁殖は容易ですが、ほかの種と容易に交雑してしまうことから、この種を絶滅させないためには野生の個体群の管理と外来種の完全除去、人工繁殖個体の再導入が必要と言われています。
【環境省】
ゲンゴロウ(虫):戦後までは北海道から九州にかけてごく普通に見られましたが、高度経済成長期以降、急速に減少しました。生育環境の変化や、外来生物による捕食が大きな原因になっています。
ハマグリ:かつては青森県の陸奥湾から九州地方にかけて広く分布していましたが、干潟の開拓などによって急激に減りました。現在では、食用に流通しているものは外来種の『シナハマグリ』などです。
国の天然記念物&絶滅危惧種の希少な魚
さて、前置きが長くなってしましたが、最後にミヤコタナゴについて詳しく見ていきたいと思います。ミヤコタナゴはコイ目コイ科に属する小型の淡水魚です。日本の固有種であり、関東地方の一部に生息しています。この種が発見されたのは明治時代後半のことで、現在の東京都文京区にある、東京帝国大学付属植物園の池で発見されました。そして、1974年には国の天然記念物に指定され、1994年に国内気象野生動植物種に指定されました。
また、環境省のレッドリスト・レッドデータブックには当初から絶滅危惧種として指定されています。このようなことから、許可のない捕獲採集や飼育、譲渡売買は禁じられています。
しかし、2014年1月14日に、驚くべきニュースが飛び込んできました。
ミヤコタナゴを譲り受けるなどしたとの疑いで、東京都の男性会社役員らが書類送検されました。男性は2012年5月に、国の許可を受けずにミヤコタナゴ28匹を無償で知人から譲り受けたとされ、約1年かけて28匹を1000匹以上に繁殖させました。
そして、2013年7月に、ミヤコタナゴが増えすぎたとして、文化庁に連絡をして発覚しました。男性のしたことは法律に違反していますが、繁殖の難しいミヤコタナゴをここまで増やしたのも事実です。そのため、文化庁の職員は『どうやって育てたのか知りたい』と語りました。